2020年 6月 の投稿一覧

消毒についてアルコールと次亜塩素酸の使い分け。

こんにちは。薬剤師のまるです。

人体に使用してはいけない成分をあたかも安全なように販売しているサイトや商品がたくさんあります。

ドラッグストアなどで消毒用のアルコールが販売していますが、それが消毒用なのか、消毒に使用できない危険な成分なのか、わからずに間違えて購入するリスクもあります。また人体に使用いても良い成分なのか、ダメなのか。

どの程度の濃度なら殺菌力のある消毒薬として有効なのか。

など、消毒薬について正しい成分を選べるようになるために、そして正しく使用できるように解説してゆきます。

 

■新型コロナウイルスに有効な消毒の成分とは

▼現時点で有効とし使用されている消毒成分

・60~80%エタノール(WHOガイドラインより)

・次亜塩素酸ナトリウム

次亜塩素酸ナトリウムは家庭用の塩素系漂白剤の成分です。身近なものを消毒するためには、水で0.05%に薄めて拭いた後水拭きをしましょう。噴霧については、絶対に行わないでください。

 

▼まだ有効性がわかっていない消毒成分

・次亜塩素酸水

・4級アンモニウム塩類

例:塩化ベンザルコニウム

例:塩化ベンゼトニウム

・二酸化塩素

・次亜塩素酸水は、塩酸又は食塩水を電解することにより得られるものをいいます。この定義とは異なっているにもかかわらず次亜塩素水として販売されているケースが多いので注意が必要です。さらに、新型コロナウイルスに有効かは不明です。次亜塩素酸水についての詳しい記事はこちらを参照ください。

・塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの第4級アンモニウム塩は医薬品や医薬部外品の消毒剤の有効成分ですが、新型コロナウイルス対策として消毒に活用することについては、現時点では評価中です。

・二酸化塩素は、新型コロナウイルス対策として消毒に活用することの有効性については、現時点では確認されておりません。

 

▼人体に絶対に使用してはいけない成分

・メタノール(メチルアルコール)

消毒に用いるアルコールは、通常、70%のエタノールなどが使用されます。メタノールは消毒薬ではありません。吐き気やめまい、昏睡や発作、場合によっては失明を起こす可能性のある危険な成分です。人体への毒性が高いものなので、手指の消毒には絶対に使用してはいけません。メタノールは燃料用アルコールとして、ドラッグストアで安価で売っていますが、消毒用には使用できません。

ちなみに、消毒に使用できるエタノールも、人体に毒性のあるメタノールもまとめて『アルコール』と呼ばれます。メタノールが燃料用アルコールと書かれた瞬間、希釈すれば消毒薬として使用できるんではないかという勘違いが生まれてしまいます。

同じアルコールでも成分によって用途が全く違うので、アルコールと書いてある商品の成分表記を見るように心がけましょう!!

エタノールの商品例ちなみに右の写真が消毒用アルコールとしてしようされているエタノールの代表例です。無水エタノールは水が含まれていない純正なエタノールということです。

 

 

 

 

下の写真が燃料用アルコールとして販売されているチルアルコールの代表例です。

メチルアルコールの商品例

これがドラッグストアで下の写真のように並んでいて間違えずに買うことができますか?

ちなみに燃料用アルコールは安いので、無水エタノールの23倍のお値段です。

安いアルコールを買おうとすると、つい安価な燃料用アルコールを買いそうなものですが、絶対に消毒用として購入しないでください。

薬剤師としては、間違える危険が高いので、消毒薬と横並びに並べてほしくないなと思いますが・・・

こんな風に横並びにされるのは怖いですよね。

■人体に使える消毒薬と使えない消毒薬

【人体に使用できる消毒薬】

エタノール

※あくまで消毒薬なので、口にたり、吸い込んだりするのは避けてください。

【人体には使用できない消毒薬】

次亜塩素酸ナトリウム

次亜塩素水

・次亜塩素酸ナトリウムというと馴染みのない方のいるかと思われますが、「ハイター」のことです。

次亜塩素酸ナトリウムは強アルアリ性で、たんぱく質を溶かしたりするため、手荒れの原因にもなります。人体には使用しない成分です。さらに『混ぜるな危険』の注意書きにもあるように塩酸などの強酸性なもの(トイレ用洗剤など)と混合すると有毒な塩素ガスを発生します。浴室などで洗剤を混ぜたことによる死亡事故も起きているので、取り扱いには注意が必要です。いずれにせよ、換気の良い環境で使用しましょう。

・次亜塩素酸水は人体に使用しても無害とされていますが、次亜塩素水と名乗って、次亜塩素酸ナトリウムの希釈溶液が販売されていたりするため、人体に使用できない分類で記載しています。他の理由として、実際に次亜塩素水は安定性が悪く、通常ポリ容器ではすぐに分解してしまいます。そのため、スプレーボトルや透明容器に入って販売されていること自体現実的はありえないためです。

 

■消毒の適正な濃度

▼エタノールについて(人体への使用OK

6080%が消毒薬に適した濃度といえます。

エタノールは、高濃度溶液中でエタノール分子は、水素結合+疎水結合によりポリマー様構造を形成し、水分子と会合することにより、大きな疎水性表面を持つクラスターを形成していることが報告されています。この構造は、77v/vで究極の状態になるため、この濃度での殺菌力が最も高くなると考えられています。

そのため、85%以上のエタノールでは殺菌力がかえって低下してしまいます。

通常70%のエタノールが販売されていますが、殺菌力が一番高い状態で販売されているということですね。

しかし、濃度の高いアルコールを使用し続けると手荒れを起こし、雑菌が繁殖してしまう可能性がありますので、ハンドクリームなどでのハンドケアも必要です。

さらに63%の濃度があれば、一部の菌・ウイルスを除き十分な殺菌効果が期待できるとされています。手指消毒薬にはそれくらいでいいかもしれません。

▼次亜塩素酸ナトリウムについて(人体への使用NG

0.05%が消毒に適した濃度といえます。

・次亜塩素酸ナトリウムは家庭用の塩素系漂白剤の成分です。身近なものを消毒するためには、水で0.05%に薄めて拭いた後水拭きをしましょう。噴霧については、絶対に行わないでください。

0.05%以上の次亜塩素酸ナトリウム液の作り方】

メーカー
(五十音順)
商品名 作り方の例
花王 ハイター 水1Lに本品25ml(商品付属のキャップ1杯)
キッチンハイター 水1Lに本品25ml(商品付属のキャップ1杯)
カネヨ石鹸 カネヨブリーチ 水1Lに本品10ml(商品付属のキャップ1/2杯)
カネヨキッチンブリーチ 水1Lに本品10ml(商品付属のキャップ1/2杯)
ミツエイ ブリーチ 水1Lに本品10ml(商品付属のキャップ1/2杯)
キッチンブリーチ 水1Lに本品10ml(商品付属のキャップ1/2杯)

参考資料・・・厚生労働省(社会福祉施設等に対する「新型コロナウイルス対策 身のまわりを 清潔にしましょう。」の周知について)

 

 

 

 

新型コロナウイルス対策消毒に次亜塩素酸は危険か。文科省から子どものいる空間への噴霧NGについて解説。

こんにちは。薬剤師のまるです。

今日は消毒についてお話します。新型コロナウイルスの流行により、実生活でも消毒薬を手に取る機会が増えたのではないでしょうか。

しかし、普段実施していなかったために、誤った使用方法をしているケースが散見されます。

居酒屋などで次亜塩素酸水を人体に噴霧するといった、あまりにも危険な消毒を行っているお店のが実際に存在したり、スーパーや百貨店で次亜塩素酸水が入口に置かれていたり。

でも、だれもがそれを疑問に思わず、消毒している姿を目の当たりにしてこれはいけない!と思ったので、健康被害が出る前に、皆さんにわかりやすく消毒の方法をお伝えできたらいいなと思っています。

 

今回知ってほしいことは2つです。

 

  • 町で見かける次亜塩素酸水は偽物がほとんど

  • そもそも噴霧がダメ

 

▼1つ目は次亜塩素酸水ってどんなものなのか知ってください。厚生省が定義している次亜塩素酸水と違う偽物の次亜塩素酸水が次亜塩素酸水という名前で売られています。

▼2つ目は正しい消毒の方法を知ってください。ウイルスを殺すための消毒は人体にも有害です。「消毒を噴霧」がそもそもダメです。有害物質を吸い込むように使用するという消毒の方法自体が間違っています。

 

新型コロナウイルスへの殺菌効果が期待できるとして注目が集まった「次亜塩素酸水」ですが、正しい生成方法とは異なる作り方をして、別物であるにもかかわらず、「次亜塩素酸水」として販売されている製品があることを知っておかなければいけません。

 

 

■次亜塩素酸水の定義

定義:塩酸または塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。

と定義しています。そもそも次亜塩素酸水は、厚生労働省からの指針により、食品衛生法で生成方法が指導されている食品添加物です。

食品添加物といっても、殺菌が主な目的なので、甘味料や着色料のように食品に混ぜることはせず、「最終食品の完成前に除去しなければいけない」と定められており、口にしてはいけないものとなっているので、注意しなければいけません。

 

厚生労働省【次亜塩素酸水についての資料1

厚生労働省【次亜塩素酸水についての資料2

 

■次亜塩素酸水はナチュラルは真っ赤なウソ!

「次亜塩素酸水は水と食塩を電気分解して作り出すので、自然派でナチュラルで化学物質ではありませんので安心してください」

 

こんなことを言われたことありませんか?それは本当でしょうか?

次亜塩素酸水を加湿器にいれて使用したり、お店の入口で噴霧器からシャワーのようにお客さんに振りかけている施設があるというニュースを見て、ありえない!と思いました。

 

水も食塩を電気分解、と聞くと、水も食塩も普段から口にしているものなので、それを電気分解した物質に対してもあまり危険を感じないのかもしれません。

ですが、次亜塩素酸水も立派な化学物質です。(化学物質がダメってわけではありませんが・・・)

 

そして使い方を間違えて使用することは危険です。

みんなが使っているから、町でよく見かけるから、安心というわけではありません。

 

■次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム水は一緒!?

次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」名前は似ていますが違います。

次亜塩素酸水は弱酸性。次亜塩素酸ナトリウム溶液は強アルカリ性です。

ですが、どちらも「次亜塩素酸(HClO)」による漂白・殺菌作用を示します。

 

すごくざっくり簡単に言うと、殺菌作用を示している物質は一緒ということです。

 

でも弱酸性と強アルカリって違うよね?なんで一緒なの?

と疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、化学式で考えると納得できると思います。

ですが、長くなるためまた改めて別の記事で書かせて頂きます。

 

溶液自体がことなっているため、強アルカリの次亜塩素酸ナトリウム水溶液は触ったときに肌荒れを起こしますが、弱酸性の次亜塩素酸水は肌荒れは起こしにくいとされています。

 

■次亜塩素酸水として販売されている水溶液はうそ!?

「偽物の次亜塩素酸水」について解説していきます。

実際に多い例は「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」を希釈、もしくは塩酸、クエン酸などの酸性溶液を混ぜることによってpHを調整した水溶液を「次亜塩素酸水」として販売したり店先に置いてあったりしているケースです。

 

塩酸または塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。(厚生労働省参照)

という厚生労働省の定義とは異なっています。つまり「次亜塩素酸水」として「偽物の次亜塩素酸水」が販売されているということです

また、この偽物の次亜塩素酸水は化学反応が生じる可能性があるとして、食品添加物として販売が認められていません。

 

■正しい「次亜塩素酸水」の見分け方

「本物の次亜塩素酸水」を見分けるためにはどのようなポイントがあるのでしょう?

  • 成分表記をチェック

  • 容器をチェック

  • 剤形をチェック

 

▼成分表記をチェック

製品の成分表や生成方法が記載されている場合は、「次亜塩素酸ナトリウム」「クエン酸」「pH調整材」などが含まれている場合には、次亜塩素酸ナトリウムの混合液である「偽物の次亜塩素酸水」である可能性が高いと考えられます。

▼容器をチェック

成分表や生成方法が記載されていない場合もあると思います。そのときは販売されている実際の容器をチェックします。「透明ボトル」「使用期限が2年以上」の次亜塩素酸水は理論上存在しません

次亜塩素酸水は非常に安定性が悪く、紫外線により分解していまうため、透明ボトルで販売されている時点で疑っていいでしょう。

また、使用期限が2年以上というのも、そもそも安定性が悪い次亜塩素酸水の期限としては長すぎます。こちらも疑って良いと思います。

▼剤形をチェック

パウダーなの粉末や、タブレット型の錠剤などの固形材料を水に溶かして作るのは、こちらも厚生労働省の定義とは異なっているため、殺菌効果と安全性が確かな次亜塩素酸水とは別のものとして考えてよいでしょう。

 

 

■次亜塩素酸水の噴霧の危険性について

次亜塩素酸水を加湿器に入れて使用したり、居酒屋のエントランスで次亜塩素酸水を全身に噴霧するトンネルを設置したりといったニュースを耳にしますが、これはNGです。

 

ウイルスを殺すための消毒は、人体にも無害でしょうか?

そもそも人が吸い込んだりすることを想定して作られていませんし、次亜塩素酸ナトリウムなどは、安定性を上げるために様々な添加物が入っています。

事実、次亜塩素酸ナトリウム溶液は噴霧すると健康被害につながるとして、社会福祉法人全国保育協議会の資料に記載があります。資料Q10参照

子どものいる空間で次亜塩素酸水を噴霧しないようにと文科省から通知がでていますが、子どもだけでなく、どんな方でも例外なく危険であることをご理解ください。

 

また、次亜塩素酸水として販売されている、次亜塩素酸の混合溶液(つまり偽物の次亜塩素酸水)をうがいや、手洗いなどで使用するのも避けた方がよいと思われます。

 

不足しがちな栄養素



こんにちは。薬剤師のまるです。

今日は不足しがちな栄養素についてお話してゆこうと思います。

ダイエットが注目されがちですが、正しく栄養管理できていますか?

栄養素について理解し、正しい栄養管理を行い、健康的な体を手に入れましょう。過度な食事制限は肌艶を失うだけでなく、健康な体を失いかねません。将来、後悔をしないためにぜひ参考になれば幸いです。

 

■カルシウム

カルシウムの推奨量は成人男性で約800mg成人女性で約650mgです。カルシウムの推奨量は成長期の1214歳が男女ともにピークとなり、男性では約1000mg、女性では800mg

となります。

 成長期にはしっかりとカルシウムを取りましょう。

 

 皆さんは自分の骨密度を知っていますか?

そして骨密度は男性では20歳、女性では18歳ころできまってしまうって知っていましたか?

20歳以降は、横ばいで、女性の場合は閉経を境に減少傾向に。男性では60歳以降減少傾向になってゆきます。私たちは成長期までに頑張って貯金したカルシウムを少しづつ切り崩しているのです。

つまり、大人になっていくらカルシウムを取っても遅いということです。

とはいっても、毎日しっかりとカルシウムを取って、減少を少しでも緩やかにしてゆくことも必要なので、成人を過ぎた方でもカルシウムを推奨量摂取するよう心がけましょう。

■カルシウムを多く含む食品

カルシウムを多く含む食品は牛乳やチーズなどの乳製品が効率よく摂取できます、魚介類も小魚や干しエビなど、骨まで丸ごと食べられる食品がカルシウムを多くとることができます。

 

■鉄分

鉄分の1日の推奨量は成人男性で約7.0mg成人女性の月経なしで約6.0mg、月経がある場合は110.5mgとなります。さらに月経の量が通常よりも多くなる状態では16mgまで上昇します。

上限量は男性成人で50mg、女子成人は40mgが上限として設定されています。

■鉄分を多く含む食品

・ほうれん草

 100g(1/3束)あたり鉄分量2mg

・切り干し大根

 20gあたりの鉄分量1.9mg

・木綿豆腐

 150g(1/2丁)あたりの鉄分量1.4mg

・さんま

 100g(1尾)あたりの鉄分量1.4mg

・牡蠣

 70g(むき身56個)あたりの鉄分量1.3mg

・あさり

 30g(むき身10個)あたりの鉄分量1.1mg

 

■食物繊維

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、女性18g以上、男性21g以上(ともに1864歳の場合)を食物繊維の1日摂取目標量として定めています。

男女どちらも、どの年齢においても目標量より下回っています。

食物繊維の摂取量が少ないと、大腸がんのリスクが上がるという報告もあるため、意識して目標量の摂取を心がけたいですね。そして快便生活を目指しましょう。

◆水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とは?

食物繊維には、水溶性と不溶性に分けられます。

【水溶性食物繊維】

水溶性食物繊維は水に溶ける食物繊維のことを言います。

植物の細胞内にある貯蔵物質や分泌物で、水に溶け、食品の水分を抱き込んでゲル化(ゼリーのような状態)します。このため、人体に好ましくない物質の吸収を妨げ、便として排出させるなどします。

▼水溶性食物繊維の特徴

①ネバネバしている

昆布やわかめ、めかぶなどの水に溶けてゲル状となり、食べ物を包み込み、ゆっくり吸収されるため腹持ちがよくなり、血糖値の急激な上昇を抑えます。

②吸着性

コレステロールを吸着して、便と一緒に排出するため、コレステロール値の増加を抑制する。

③腸内環境を整える

大腸内で発酵することで、善玉菌を増加させ、腸内環境を整えます。

【不溶性食物繊維】

不溶性食物繊維は穀類やイモ類、豆類、根菜類に比較的多い、水に溶けない食物繊維のことを言います。

植物の細胞壁の構造物質が中心となっていて、水に溶けず、水分を吸収して膨れます(イメージとしてはふえるわかめちゃん)。このため、腸壁を刺激して腸の蠕動運動を盛んにし、食物の残りかすなどを速やかに体外に排出してくれます。

▼溶性食物繊維の特徴

①保水性

胃や腸で水分を吸収して大きく膨らむので腸を刺激して、腸の蠕動運動を活発にし、排便を促します。

②腸内環境を整える

大腸内で発酵することで、善玉菌を増加させ、腸内環境を整えます。