新型コロナウイルス対策消毒に次亜塩素酸は危険か。文科省から子どものいる空間への噴霧NGについて解説。

こんにちは。薬剤師のまるです。

今日は消毒についてお話します。新型コロナウイルスの流行により、実生活でも消毒薬を手に取る機会が増えたのではないでしょうか。

しかし、普段実施していなかったために、誤った使用方法をしているケースが散見されます。

居酒屋などで次亜塩素酸水を人体に噴霧するといった、あまりにも危険な消毒を行っているお店のが実際に存在したり、スーパーや百貨店で次亜塩素酸水が入口に置かれていたり。

でも、だれもがそれを疑問に思わず、消毒している姿を目の当たりにしてこれはいけない!と思ったので、健康被害が出る前に、皆さんにわかりやすく消毒の方法をお伝えできたらいいなと思っています。

 

今回知ってほしいことは2つです。

 

  • 町で見かける次亜塩素酸水は偽物がほとんど

  • そもそも噴霧がダメ

 

▼1つ目は次亜塩素酸水ってどんなものなのか知ってください。厚生省が定義している次亜塩素酸水と違う偽物の次亜塩素酸水が次亜塩素酸水という名前で売られています。

▼2つ目は正しい消毒の方法を知ってください。ウイルスを殺すための消毒は人体にも有害です。「消毒を噴霧」がそもそもダメです。有害物質を吸い込むように使用するという消毒の方法自体が間違っています。

 

新型コロナウイルスへの殺菌効果が期待できるとして注目が集まった「次亜塩素酸水」ですが、正しい生成方法とは異なる作り方をして、別物であるにもかかわらず、「次亜塩素酸水」として販売されている製品があることを知っておかなければいけません。

 

 

■次亜塩素酸水の定義

定義:塩酸または塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。

と定義しています。そもそも次亜塩素酸水は、厚生労働省からの指針により、食品衛生法で生成方法が指導されている食品添加物です。

食品添加物といっても、殺菌が主な目的なので、甘味料や着色料のように食品に混ぜることはせず、「最終食品の完成前に除去しなければいけない」と定められており、口にしてはいけないものとなっているので、注意しなければいけません。

 

厚生労働省【次亜塩素酸水についての資料1

厚生労働省【次亜塩素酸水についての資料2

 

■次亜塩素酸水はナチュラルは真っ赤なウソ!

「次亜塩素酸水は水と食塩を電気分解して作り出すので、自然派でナチュラルで化学物質ではありませんので安心してください」

 

こんなことを言われたことありませんか?それは本当でしょうか?

次亜塩素酸水を加湿器にいれて使用したり、お店の入口で噴霧器からシャワーのようにお客さんに振りかけている施設があるというニュースを見て、ありえない!と思いました。

 

水も食塩を電気分解、と聞くと、水も食塩も普段から口にしているものなので、それを電気分解した物質に対してもあまり危険を感じないのかもしれません。

ですが、次亜塩素酸水も立派な化学物質です。(化学物質がダメってわけではありませんが・・・)

 

そして使い方を間違えて使用することは危険です。

みんなが使っているから、町でよく見かけるから、安心というわけではありません。

 

■次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム水は一緒!?

次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」名前は似ていますが違います。

次亜塩素酸水は弱酸性。次亜塩素酸ナトリウム溶液は強アルカリ性です。

ですが、どちらも「次亜塩素酸(HClO)」による漂白・殺菌作用を示します。

 

すごくざっくり簡単に言うと、殺菌作用を示している物質は一緒ということです。

 

でも弱酸性と強アルカリって違うよね?なんで一緒なの?

と疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、化学式で考えると納得できると思います。

ですが、長くなるためまた改めて別の記事で書かせて頂きます。

 

溶液自体がことなっているため、強アルカリの次亜塩素酸ナトリウム水溶液は触ったときに肌荒れを起こしますが、弱酸性の次亜塩素酸水は肌荒れは起こしにくいとされています。

 

■次亜塩素酸水として販売されている水溶液はうそ!?

「偽物の次亜塩素酸水」について解説していきます。

実際に多い例は「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」を希釈、もしくは塩酸、クエン酸などの酸性溶液を混ぜることによってpHを調整した水溶液を「次亜塩素酸水」として販売したり店先に置いてあったりしているケースです。

 

塩酸または塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。(厚生労働省参照)

という厚生労働省の定義とは異なっています。つまり「次亜塩素酸水」として「偽物の次亜塩素酸水」が販売されているということです

また、この偽物の次亜塩素酸水は化学反応が生じる可能性があるとして、食品添加物として販売が認められていません。

 

■正しい「次亜塩素酸水」の見分け方

「本物の次亜塩素酸水」を見分けるためにはどのようなポイントがあるのでしょう?

  • 成分表記をチェック

  • 容器をチェック

  • 剤形をチェック

 

▼成分表記をチェック

製品の成分表や生成方法が記載されている場合は、「次亜塩素酸ナトリウム」「クエン酸」「pH調整材」などが含まれている場合には、次亜塩素酸ナトリウムの混合液である「偽物の次亜塩素酸水」である可能性が高いと考えられます。

▼容器をチェック

成分表や生成方法が記載されていない場合もあると思います。そのときは販売されている実際の容器をチェックします。「透明ボトル」「使用期限が2年以上」の次亜塩素酸水は理論上存在しません

次亜塩素酸水は非常に安定性が悪く、紫外線により分解していまうため、透明ボトルで販売されている時点で疑っていいでしょう。

また、使用期限が2年以上というのも、そもそも安定性が悪い次亜塩素酸水の期限としては長すぎます。こちらも疑って良いと思います。

▼剤形をチェック

パウダーなの粉末や、タブレット型の錠剤などの固形材料を水に溶かして作るのは、こちらも厚生労働省の定義とは異なっているため、殺菌効果と安全性が確かな次亜塩素酸水とは別のものとして考えてよいでしょう。

 

 

■次亜塩素酸水の噴霧の危険性について

次亜塩素酸水を加湿器に入れて使用したり、居酒屋のエントランスで次亜塩素酸水を全身に噴霧するトンネルを設置したりといったニュースを耳にしますが、これはNGです。

 

ウイルスを殺すための消毒は、人体にも無害でしょうか?

そもそも人が吸い込んだりすることを想定して作られていませんし、次亜塩素酸ナトリウムなどは、安定性を上げるために様々な添加物が入っています。

事実、次亜塩素酸ナトリウム溶液は噴霧すると健康被害につながるとして、社会福祉法人全国保育協議会の資料に記載があります。資料Q10参照

子どものいる空間で次亜塩素酸水を噴霧しないようにと文科省から通知がでていますが、子どもだけでなく、どんな方でも例外なく危険であることをご理解ください。

 

また、次亜塩素酸水として販売されている、次亜塩素酸の混合溶液(つまり偽物の次亜塩素酸水)をうがいや、手洗いなどで使用するのも避けた方がよいと思われます。

 

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